明日をつむぐ手V 〜私とおばちゃんの手と手〜
今日が丸谷おばちゃん最終日。
先の短いおじちゃんの介護のために退職されることに。
何となく静かな厨房だった。
とはいえ何度も冗談と笑いがあったりもした。
でもその冗談と笑いが何となくしらけ乾いていた。
末永おばちゃんも江坂さんも寂しさに気落ちしていた。
そして鶏のことを一手に丸谷おばちゃんが引き受けていたから
これからどうなるかの不安もあった。
何せ明るくムードメーカーの丸谷おばちゃんが明日から居なくなるのだ。
これからはおじちゃんとの時間を大切にして欲しいのは当然だ。
でもなんで?
って平山旅館の山の上にある縁結びの神様「熊野神社」に
恨みがましく訴えたりもした。
新年会、髪まで染めて楽しみにしていたよ。
慰安旅行も楽しみにしていたしね。
akkoチャンが東京に店出す時は出張して手伝いに行くけん。
て言ってくれてた。
仕事は絶対に辞めん。って言ってたしね。
日頃の行いの良いおばちゃんの、そのおじちゃんに何でって…。
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「また落ち着いたら働きにきてね。」とサッチンが挨拶に来た。
皆はまたいつか丸谷おばちゃんと一緒になれるといいね。
期間限定の修行が終わったら東京に戻る私はワガママにも
「akkoは寂しいな。」とポツリと言ってしまったよ。
すると。
「あんたは鶏を私から覚えたけん。それで良かろう。
皆がやりきらん鶏を1人やりよった。」と。
あぁ、そうだったよ。
最初親父さんに鶏をやるように言われ、旅館厨房の冷ややかな視線と親父さんの迫力ある指導に緊張して惨敗だった。
そしたら丸谷おばちゃんが「悔しかったんやね。一緒にやろうね。」ってakkoに手取り足取り教えてくれたんだ。
今では鶏を丸ごと一匹贈答品用におろせるようにはなったよ。
焼鳥屋もできるようになるかな。
「あんたが今度みんなに教えるんよ。それで良かったい。」
おばちゃんに会えなくなっても、おばちゃんから教えてもらった
鶏さばきを、私の手が覚えている。
東京で「そんなのドコで覚えたの?」って聞かれたら
akkoは「壱岐もの屋の丸谷さんです。」って答えるだろう。
そうしてまた誰かにその鶏さばきを伝えていく。
郷土料理もそう。
名もない人から人へ伝わっていく手。
それが今日から明日、未来へと続いていく。
明日をつむぐ手と手をakkoと丸谷おばちゃんは握ったのだね。
「それで良かったい。」とはそういうこと。
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丸谷おばちゃんは今日も1人、キレイに後片付けをして帰っていった。
彼女は最後までプロの仕事人だった。
日時: 2006年01月21日 23:05
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